ノンアルコール飲料専門ECサイト / 飲まない人も飲む人もそれぞれに寛げる "Cafe MARUKU"

Special Talk : feat. Keiichi Sokabe (1)

ミュージシャン・曽我部恵一 ✖︎ 小説家・桜井鈴茂
飲むこと / 飲まないこと。その先の話。
【第1回】

撮影:川畑里菜
インタビュー・構成:松まさる

 ノンアルコール飲料専門ECサイト「MARUKU」オープン記念として、サイトの主宰者でもある小説家の桜井鈴茂と、ミュージシャンの曽我部恵一の二人に、アルコールを飲まないという選択、ノンアル生活の魅力、飲むこと/飲まないことが創作に与える影響等について、じっくりと語ってもらった。
 90年代から現在までサニーデイ・サービスおよびソロ名義で、旺盛に音楽を発表し続けている曽我部恵一。00年代から小説家としての活動を開始し、寡作ながら文学/小説の可能性を模索し続けている桜井鈴茂。1998年の晩秋に京都の飲み屋さんでたまたま隣席になり、酔った勢いもあって意気投合したという二人。爾来、20年以上にわたり、互いに刺激を与えあってきた二人の対談は、それぞれが取り組む飲食業と、コロナ禍が続くこの時代とその先についても話題が及んだ。時に思わぬ本音が漏れ、二人の意外な一面が垣間見えた対談の模様を、全4回にわたってお送りする。

飲んでいる自分があんまり好きじゃなくなって、8年前にやめたんです。(曽我部)

 

——少し古いデータになるのですが、国が2016年に調査した結果によると飲酒習慣を持っている20代の男性は約10%、一方50代は約50%。そこで、まずお二人に伺いたいのは、飲酒習慣率の高い年齢層にほぼ当てはまるお二人が、どうしてアルコールをやめたんでしょうか?

曽我部:20代が10パーセント!? ほんと? すごいっすね。僕はもう単純に飲みすぎてるし、飲んでいる自分があんまり好きじゃなくなって、8年前にやめたんです。お酒を飲んで気が大きくなったりリラックスしすぎたりすると、言わなくていいことを言ったりしてて。礼儀とかがあるべき間柄なのに、それがなくなってたりもしてたかな。平たく言うと、すごく失礼な人間になっていたということが多々あって、それに気づいてやめました。

桜井:そういう酒席でのあれこれを翌日でも覚えてる?

曽我部:覚えてない時もあるし覚えてる時もある。最近でも10数年前の席で言ってしまったことを思い返すことがある。

曽我部恵一

——桜井さんはどういうきっかけで?

桜井:ぼくは飲むのやめて、まだ半年を過ぎたばかりだけど、理由はほとんど同じですね。根があまのじゃくなんで、あるミュージシャンのファンの前でその人をこっぴどくディスったり、そうじゃなくても、あーあ、また暴言吐いちゃったなあ、みたいなのを繰り返してて。今、曽我部くんが言ったように、礼儀を保つべきところをお酒の力を借りて踏み越えてた。自分の場合、酔った時に失うのは自制心だけらしく、記憶はおおむね残ってるんだよね。だから翌朝が最悪で。自分の言ったことからその時の相手の表情まで鮮やかに蘇って……もう、鬱ですよ、翌日はずっと(笑)。で、猛省はするんだけど……次にお酒を飲むと、また同じようなことをやらかす、というループにだんだんと疲れてきまして。若いときは酔っぱらって楽しいことの方が多かったけど……40を過ぎたあたりからかな、楽しいことよりも後悔することの方が多くなった。

曽我部:要するに飲みすぎちゃうんだろうね。適量で済む人は全然問題ないと思う。

桜井:飲み会とかパーティに行く前には、今夜はスマートなお酒の飲み方をしようって心に誓って出かけるの。ベランダに出て、頭を垂れたりして(笑)。でも、3杯ぐらい飲んだころには、そんな誓いもどこかに吹っ飛んじゃって、いつものごとくダメな酔っ払いになってる(笑)。……曽我部くんはもうお酒はやめようって決心した瞬間があるのかな?

曽我部:やめようと思ったその日から、ずっとやめてます。

——すごい。飲みたい誘惑にかられたことはないんですか?

曽我部:全くないです。

——意思がすごくかたい。

曽我部:意思というか、たいしてお酒の味が好きじゃなかったんでしょうね、酔っ払ってる状態が好きだっただけで。

——桜井さんは二日酔いの中で断酒を決心したんですか?

桜井:いや、その時点で決心というのはなく、断酒はさすがに無理だろうから、ひとまず3、4日あるいは1週間ぐらいアルコールを抜こうと思った。改めて振り返れば、約30年間にわたってほぼ毎日飲んできたし、この15年ぐらいに限って言えば、ただの1日も休肝日がなかったんで。それで、いざ抜いてみたら、一日が長いことにびっくり。以前は晩ご飯時にお酒を飲み始めて、その後はソファーに寝転がってだらだらとスマホをいじったり、面倒ゆえにシャッフル再生にした音楽を流し聞くのが関の山だった。それがお酒を飲まないと頭がシャキッとしてるから、晩ご飯の後もガチで読書はできるし、音楽を聴くにしてもレコードに針を落として真剣に聴ける。自分の感覚としては、一日の時間が三時間くらい増えた。それが嬉しくて、お酒を飲まない日がどんどん更新されていったって感じです。

桜井鈴茂

お酒をやめてからは、自分のしっかりしたジャッジのもとに作品を出せているから、満足できる。(曽我部)

 

——曽我部さんは、アルコールをやめてよかったことってありますか?

曽我部:曲を作ったり、家族と過ごす時間は増えましたし、二日酔いがないからいいですね。でも、酩酊してる時に得るものもあるから、それは失ってます(笑)。だから、飲むも飲まないもどっちが良いとかっていうのはないかな。

桜井:クリアな脳みそで過ごす時間はあきらかに増えるよね。

曽我部:でも、みんな、ずっと脳がクリアでいるには現実がきついから飲むわけだよね。仕事で散々いじめられて、やっと家に帰ってきてビール飲んでテレビを見て、そこでようやく精神と体がリラックスできるわけじゃん。それは大事な瞬間だろうね。だけど、ものをつくる人間はその抑圧を意識的に感じ取ってそれを作品にしていくから、精神的に強くないとね。抑圧を開放していたら仕事にならない。ミュージシャンでお酒を飲まない人は結構多いよ。普通の人は鬱になっちゃうから、飲んだほうがいいと思うけど。

——お酒をやめることは創作活動にはプラスなんですね。

曽我部:僕の場合、飲酒をやめたことはすごくよかったです。具体的に言うと、お酒をやめた後は、作品に対してジャッジの精度が上がった。お酒を飲んでた時期の昔の曲を聴くと、全然だめですね。よくこれで世間に出せたなって思う(笑)。20代前半はまだエネルギーがあるから、出せちゃえたんですよね。でも、年をとった中年以降のゆるさっていうのは見てられない(笑)。そこはほんとに絶対戻りたくないポイントです。

桜井:曲のクオリティーに係わってるんだね。

曽我部:うん、とても。お酒を飲んでいる時は、アルバムの選曲やジャケットとか全ての点において、ゆるい。完成度7割ぐらい。

——7割ですか。

曽我部:頑張って7割。もっとつめたら120点ぐらい行けるのになって思う昔のアルバムは多い。いい曲がすごい入ってるから。だから、お酒をやめてからは、自分のしっかりしたジャッジのもとで出せているから、満足できるし、打率が高い。

お酒をやめて眠りが深くなったし、そのせいか、体も軽くなった。(桜井)

桜井:おれは、まだシラフ歴半年だから、お酒を飲まなくなったことが書く小説にどう影響が出るのかは、わからない。でも、二日酔いで一日が潰れることはなくなった。それだけでもプラス。

曽我部:それに、以前は、毎晩どっかの居酒屋に行って、その都度4000円ぐらい払ったりしてた。後輩がいたらみんなの分払ったりしてたし。実はお酒にすごくお金をかけてた。

桜井:エネルギー、時間、お金……いろんなものがお酒に注ぎ込まれていたね。あと、おれは、お酒をやめて眠りが深くなったし、そのせいか、体も軽くなった。

曽我部:ほんと?

桜井:うん。もう何年も、睡眠障害だったの。酔ってるから寝つきは悪くはないんだけど、未明……午前4時とかに目が覚めて、その後は朝まで寝れなくなってた。中途覚醒っていうらしいけど。それがなくなって、今は8時ぐらいまでぐっすり眠れるようになった。おのずと、体も軽くなったような気がする。ただ、ぼんやりする時間……起きていながら脳を休める時間はなくなったかも。

曽我部:ゆるい時間はあんまないよね。ウキウキしながら居酒屋に向かうあの感じもなくなった(笑)。だから、お酒はリラックスするためとか、良い面もあるから、禁酒を勧めるつもりはない。

——曽我部さんのリラックスする方法は?

曽我部:お酒を飲まなくなってからは、なんの楽しみもないですよ(笑)。だからと言って、また飲みたいとは思わないけど。

桜井:それほど必要としなくなってるんじゃない? リラックスする時間とかウキウキする時間とかを。

曽我部:ああ、そうかもね。

桜井:人生の捉え方が変わってきてるっていうか。

曽我部: かつてハードだった日々の、癒しとしてのお酒と、それにまつわる楽しい時間。笑顔とかバカ話とかエロ話とか。そういうものを必要としてないんだろうね。だから今は、生きてる楽しみは……例えば、今日だったら、雨があがった後に一瞬涼しい風が吹いて、蝶が飛んでいたのを見て、ああ生きててよかったな、って感じ(笑)。それ以外はあんまり楽しくないし、そんなに楽しさを求めてないかもしれない。

——日常の機微に幸せを見出す感じですかね。

曽我部:特に幸せを求めて生きてないかもしれないですよね。

桜井:ああ、それ、わかる。

曽我部:音楽ができたら、それでいいかなって。

桜井:おれも仕事をやり終えた時の充実感みたいなのが生活の中心になってるね。幸せってのはこちらから求めてもどうしようもなくて、一生懸命にやってるとご褒美にもらえるものっていう。

——もう少しで悟りの境地ですかね?(笑)

曽我部:単純に体力がなくなったんじゃない? 昔は体力があったから飲んで騒いでもまだ余力があったけど、今はそういうことをやっていると人生があっという間に終わっちゃいそうで。

桜井:ほんと、終わっちゃいそうだよね(笑)

曽我部:お酒の快楽を、ある程度把握できたっていうのもあるのかもしんない。

桜井:あっ、それもある。だいたいやりつくしてる(笑)。

行きつけのお店でもエルディンガーを飲むために「これ置いてくれない? おれ、自分で卸しやるから。配達もするよ」って頼み込んで。(桜井)

——桜井さんも曽我部さんも、お酒を飲むこと自体は否定ではなくて、お酒との適正距離を保ってる感じなんですかね?

桜井:お酒との適正距離については散々考えてきたけど、結局、今夜は2杯まで、みたいな自己管理がおれにはできないってことに遅ればせながら気づいて(笑)。だから、いっそ飲まないという選択をすることで、ようやく適正距離が取れている感じかな。以前ほどじゃないにしても、今でも飲み屋さんやパーティには行くし。そこで自分は酒類を飲まない、っていうだけ。でも、オレンジジュースやジンジャーエールでじゅうぶんなのかっていうと、ぜんぜんじゅうぶんじゃなくて(笑)。やっぱ、おれ、ビールの味がすごく好きだから。

——そこからこの事業=ECサイトを始めるという流れに?

桜井:最初のうちは自宅でも行きつけのバーでも日本の大手メーカーのビールテイスト飲料を飲んでたんだけど、頭に引っかかっていたのは「もし本当にお酒をやめたら、今後はこの雑味の多いビールもどきを飲み続けなきゃいけないのか」ってことだったんだよね。それが憂鬱だった(笑)。そんな時に「エルディンガー」の存在を知って、注文して飲んでみたら、すごく美味しくて。これならノンアル生活を続けられる!と思った。それで、行きつけのバーでもエルディンガーを飲めるように「これ置いてくれない? おれ、自分で卸やるから。配達もするよ」って店主に頼み込んで。まったく何やってんだって感じだけど(笑)。一方、ちょうどそんな折に、うちの奥さんが仕事やめたいとか言い出して、そのへんの事情も絡んでるんだけど……いつのまにか、このノンアル事業に発展していきました(笑)。

——曽我部さんも普段ノンアルを飲んでらっしゃるんですか?

曽我部:僕はたまにっすね、みんなでワイワイやってる時は、ノンアルビール頼むかな。

——どういった銘柄を? 

曽我部:このエルディンガーやヴァイエンステファンとかドイツ系のノンアルを飲んでます。

桜井:曽我部くんは、普段、家ではノンアル飲まないの? 

曽我部:全く飲まないね。

桜井:へえ、そうなんだ。おれは、この「エルディンガー」とか「小樽」とかが、長年にわたって愛飲してきたエビスビールに取って代わってくれた。食事は相変わらず晩酌系(笑)。

曽我部:僕、去年の初めにウィーンに行ったんですよ。美術館にあるカフェに入ったらノンアルがあって、それがすごくおいしかったんですよね。日本のノンアルと比べると、こんなにクオリティー違うんだなって驚いた。あと、ビールの種類とほとんど同じくらいの種類のノンアルが置いてあって。あ、これもう、アルコール入りのビールを飲む必要がないんじゃないかなって思った。

——ヨーロッパはノンアル文化が進んでるんですね。

桜井:特に、北のほうはそうみたいだね。ロンドンでは、15種類の生のノンアルビールが飲めるバーがオープンした、というニュースを読んだし、アメリカでもニューヨークなんかはすごく進んできてるみたい。

曽我部:へー、ノンアルの生ビール? なんかシュールだね(笑)。 ビール好きな人が行くのかな? それとも、今までは飲みたくても飲めなかった人? 飲酒をやめた人?

桜井:やめた人や健康上飲めなくなった人はもちろん、飲めるけどあえてお酒を飲まない生活を送る人、「ソーバーキュリアス」も増えているらしいよ。「ソーバー」はシラフ、「キュリアス」は好奇心が強い、つまり……。

曽我部:シラフでいることに興味がある、好奇心があるっていうことか。

桜井:そうそう。飲まないけど、バーやパーティに行かないってことじゃなくて、ちゃんと社交の場には行くんだよね。これまでの「断酒」っていうと、一生飲み屋さんには行けない、みたいな、なんか孤独で暗いイメージがあったけど、ソーバーキュリアスを実践する人たちは、バーやパーティーにも堂々と行って、そこでお酒じゃないものを飲みながら飲んでる人と同じように楽しむ。新しい、オルタナティヴな、スタイルだね。

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年齢や男女を問わず、じつは多くの人が、意識的にせよ無意識理にせよ、お酒の代替物を探してるんじゃないかなって気がする。(桜井)

 

——「MARUKU」はECサイト開設前から、曽我部さんが下北沢でオーナーをしているカフェ兼レコード店の「CITY COUNTRY CITY」を毎週水曜日に間借りして、国内外のノンアル飲料を提供するロー・アルコール・ビストロ(Low Alcoholic Bistro)も始めているとか。

桜井:はい、5月の初めから間借りでやらせてもらってます。最初のころはノンアルコール飲料中心のドリンクメニューを見て、驚くお客さんが多かったけど、最近はノンアル目的で来てくれるお客さんが少しずつ増えてるかな。それから、店で初めてノンアルを飲んで、ビールに比べても遜色のない味にびっくりする人も。「MARUKU」を始めて、まだ数ヶ月だけど、この短い間にもノンアルに対するみんなの感覚が変わってきているのを実感します。年齢や男女を問わず、じつはけっこう多くの人が、意識的にせよ無意識裡にせよ、お酒の代替物を探してるんじゃないかなって気がします。

【インフォメーション】
Low Alcoholic Bistro「MARUKU」

下北沢「CITY COUNTRY CITY」にて、毎週水曜に営業。
営業時間:18:00~23:00
住所:東京都世田谷区北沢2-12-13 細沢ビル 4F
TEL:03-3410-6080 (City Country City)
TEL:070-1429-1821(MARUKU 水曜のみ)

【プロフィール】

曽我部恵一(そかべけいいち)
1971年8月26日生まれ。乙女座、AB型。香川県出身。
90年代初頭よりサニーデイ・サービスのヴォーカリスト/ギタリストとして活動を始める。
1995年に1stアルバム『若者たち』を発表。'70年代の日本のフォーク/ロックを'90年代のスタイルで解釈・再構築したまったく新しいサウンドは、聴く者に強烈な印象をあたえた。
2001年のクリスマス、NY同時多発テロに触発され制作されたシングル「ギター」でソロデビュー。
2004年、自主レーベルROSE RECORDSを設立し、インディペンデント/DIYを基軸とした活動を開始する。
以後、サニーデイ・サービス/ソロと並行し、プロデュース・楽曲提供・映画音楽・CM音楽・執筆・俳優など、形態にとらわれない表現を続ける。
http://www.sokabekeiichi.com/
桜井鈴茂(さくらいすずも)
1968年4月23日、札幌市の天使病院にて出生。石狩郡当別町で育つ。明治学院大学社会学部卒業。同志社大学大学院商学研究科中退。バイク便ライダー、カフェ店員、郵便配達員、スナックのボーイ、小料理屋店長、水道検針員など、さまざまな職を経たのちに、『アレルヤ』(朝日新聞社/2002年、双葉文庫/2010年)で第13回朝日新人文学賞を受賞。著書に『終わりまであとどれくらいだろう』(双葉社/2005年)、『女たち』(フォイル/2009年)、『冬の旅』(河出書房新社/2011 年)、『どうしてこんなところに』(双葉社/2014年)、『へんてこなこの場所から』(文遊社/2015年)、『できそこないの世界でおれたちは』(双葉社/2018年)。現在は、双葉社の文芸webマガジン「COLORFUL」http://www.f-bungei.jp にて『探偵になんて向いてない』を連載中。 ハーフマラソンとDJと旅と猫とノンアルコールビールを愛好。
公式サイト http://www.sakuraisuzumo.com/
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