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Special Talk : feat. Akio Nakamata (4)

文芸評論家・仲俣暁生 ✖︎ 小説家・桜井鈴茂
「オルタナを生きるためのノンアル」
【第4回】

司会・構成:宮田文久

撮影:川畑里菜


世界に対して、「別の道」を準備する――ノンアルコール・カルチャーの広がりゆく地平を見つめた本対談も、いよいよ最終回。評論家・編集者の仲俣暁生と、「MARUKU」サイト主宰者・小説家の桜井鈴茂は、どこにたどり着くのだろうか。

ふと気づくと息苦しくなっているこの世の中を、どのように風通しよくするのか。それは、ノンアルという「オルタナティブ」を、どこまでデリバーしていけるのかにかかっている。ノンアル・カルチャーの未来が今、地平線の向こうに顔を出す。

ノンアルコールビールを飲む、というオルタナティヴがあれば、それは誰かにとっての「救い」になるかもしれない。(仲俣)


仲俣 ここまで話して見えてきたのは、「オルタナティヴがある」ということは「救い」になるかもしれない、ということですよね。二律背反の中で、どちらかを選べ、というのが通常の私たちの世界でしょう。酒を飲むのか、禁酒するのかというのはそのひとつのパターンであるわけだけれど、ノンアルコールビールを飲む、というオルタナティヴがあれば、それは誰かにとっての「救い」になるかもしれない。そして「小説」の役割も、きっとそういうものじゃないのかな。

桜井 うん、そういうものでしょうね。

仲俣 小説だけではく、音楽でも何でも、カルチャーが人に与える影響というのは、「世界の見え方を変える」ということでしょう。経験した途端に、それまでとは違った目で世の中を見るようになる。ノンアルコールビールが単なる代用品ではなくて、美味しいものがあるということを知ると――まさに僕自身、美味しいノンアルコールビールを飲んだら、見え方が変わったんだよね。だって、そんなものが存在するということ自体を知らなかったからさ。すごくオルタナティブな経験だったんですよ。

桜井 めちゃくちゃわかります。ぼくも何ヶ月か前にそれを経験したので。存在してることさえ知らなかったもう一つの世界がにょっと姿を現した(笑)。

 仲俣 「文学」の成分がない「小説」が、文学嫌いでも小説を読んでみたいという人に届きうる可能性があるように、ノンアルコールビールがちゃんとした「選択肢」になっていくといいですよね。いや、僕は酒も飲み続けるけれど(笑)、でもオルタナティブがあるということは、とても重要なことですよ。たとえば「ないものにされているものを可視化する」こともまた、「小説」の大事な役割じゃないですか。この世界で存在しているのに記述されていないものを、「小説」にする。知人のSF作家・藤井大洋は、作品によくエンジニアを登場させるんです。世の中にはこんなにたくさんいるのに描かれないSEを描いている。同じように、桜井さんがコンビニ店員などの人を小説で書いていることと、オルタナティブのスピリットを維持していることには、連続性があるんですよ。

仲俣暁生

言葉の通じない人が小説に出てくると、風通しがよくなる。(桜井)


桜井 自分の小説について、よく思うのは、かなり早い時期の作品から……いや、最初の小説から、日本に暮らす外国人が登場してるんですよね。日本の文学には意外と出てこないじゃないですか。

仲俣 桜井さんは倫理的な配慮で書いているわけじゃないんですよね。それがグローバリゼーションの現実だから描く。

桜井 ええ、実際に自分の周りにいるから書くんですけど、初めての小説で外国人を登場させて、ぼく自身ハッとしたのは、俄然、風通しがよくなるってことなんですよ。言葉が通じない人と意思疎通をはかろうとすると、込み入った会話なんてできないから、やりとりはシンプルになる。シンプルになると、たくさんの隙間ができる。他者の入ってこられる隙間が。

仲俣 ハイコンテクストな文学言語が機能しなくなるんですよね。ライブハウスやクラブで、初対面の人間同士がひとこと、ふたこと喋っただけで何かが通じるみたいな感覚が、桜井さんの小説には書かれている。僕が好きな、JAMというバンドの『START!』という曲には、俺もお前もお互いに名前もわからないけど、この一期一会の瞬間がスタートだ、というようなフレーズがあるんですよ。社会って、そういうものじゃないですか。

桜井 そう、リアルな場、ぼくらが暮らす社会ってそういうもんですよね。

「MARUKU」では、いずれレコードのレーベルもやろうと思ってる。(桜井)


仲俣 そうした社会に如何に、オルタナティヴなものをデリバーするか、という問題もある。ノンアルコールビールはもちろんのこと、小説にしても、カルチャーが好きでなくとも切実にオルタナティヴな道を必要としている人はいるだろうし、でもその人が小説を手に取る可能性があるのは、何も本屋さんだけとは限らないでしょう。

桜井 小説もノンアルコールビールと一緒に、「MARUKU」のウェブサイトで売ろうかなあ。

仲俣 ノンアルコールビールと一緒にQRコードが届いて、そこにアクセスすれば読める、というのも、実験としては面白いかもしれないね。

桜井 レコード・レーベルはいずれやろうと思ってるんですけどね。ぼくがこの世に存在する「モノ」として一番好きなのは、たぶんレコードだから(笑)。

 仲俣 そういえば、今さらだけど、「まるく」ってどういう意味なんですか?

桜井 これはうちの妻の案なんです。これまで彼女はトンがって生きてきて、そのことでずいぶんと失敗を重ねたから、今後は「まるく」生きたい、と。それから、人生のあれやこれやが「まるく」おさまりますように、という願いも込めて(笑)。

仲俣 なるほど、「まるく」ね(笑)。

桜井鈴茂

別にトンがらなくてもオルタナティヴでありうる。(仲俣)


桜井 それもちょっと不思議なんですよね。この対談でも話したように、僕はアルコールを摂らないということが、むしろトンがってるんじゃないかと思い、そのトンガリにも惹かれて今に至るんだけど、彼女はこれまでの失敗を踏まえながら、これからは「まるく」生きたいと願って、ノンアルコールの世界に踏み出したので。

仲俣 いや、でも、それも面白いんじゃないですか。従来はオルタナティヴであろうと思ったらトンがるしかなかったんだけれども、別にトンがらなくてもオルタナティヴでありうるようなものが、今から出てくればいいわけでしょう。

桜井 そうか、そうですよね! さすが仲俣さん、うまくまとめてくださる(笑)。

仲俣 そうした新しいオルタナティヴが、今からこの「MARUKU」で、ノンアルコール飲料や小説の形に結実していけばいいですね。

 (終わり)

 

仲俣暁生氏
仲俣暁生(なかまたあきお)
評論家・編集者。1964年、東京生まれ。著書『ポスト・ムラカミの日本文学』、『極西文学論―Westway to the world』、『〈ことば〉の仕事』、『再起動せよと雑誌はいう』、『失われた娯楽を求めて―極西マンガ論』、『失われた「文学」を求めて|文芸時評編|』、共編著『「鍵のかかった部屋」をいかに解体するか』『編集進化論―editするのは誰か?』など。下北沢に20年以上在住。
桜井鈴茂(さくらいすずも)
1968年4月23日、札幌市の天使病院にて出生。石狩郡当別町で育つ。明治学院大学社会学部卒業。同志社大学大学院商学研究科中退。バイク便ライダー、カフェ店員、郵便配達員、スナックのボーイ、小料理屋店長、水道検針員など、さまざまな職を経たのちに、『アレルヤ』(朝日新聞社/2002年、双葉文庫/2010年)で第13回朝日新人文学賞を受賞。著書に『終わりまであとどれくらいだろう』(双葉社/2005年)、『女たち』(フォイル/2009年)、『冬の旅』(河出書房新社/2011 年)、『どうしてこんなところに』(双葉社/2014年)、『へんてこなこの場所から』(文遊社/2015年)、『できそこないの世界でおれたちは』(双葉社/2018年)。現在は、双葉社の文芸webマガジン「COLORFUL」http://www.f-bungei.jp にて『探偵になんて向いてない』を連載中。 ハーフマラソンとDJと旅と猫とノンアルコールビールを愛好。
公式サイト http://www.sakuraisuzumo.com/
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