ノンアルコール飲料専門ECサイト / 飲まない人も飲む人もそれぞれに寛げる "Cafe MARUKU"

Special Talk : feat. Akio Nakamata (1)

文芸評論家・仲俣暁生 ✖︎ 小説家・桜井鈴茂
「オルタナを生きるためのノンアル」
【第1回】

司会・構成:宮田文久

撮影:川畑里菜

 

いよいよオープンしたノンアルコール飲料専門ECサイト「MARUKU」。ノンアルの魅力を語る対談シリーズ第二弾は、サイト主宰者の桜井鈴茂と縁の深い評論家・編集者、仲俣暁生がゲストだ。

フリーランス編集者にして、文芸作品に造詣の深い仲俣と、小説家である桜井。二人は文章表現に携わる同志として、そして下北沢を中心に飲み歩く仲間として、20年近く友人関係にある。ノンアルに“目覚めた”桜井の大きな変化から始まる対話は、全4回にわたって深まってゆく。

シラフできちんと話すのは、今日が初めてかもね(笑)(仲俣)

 

——お二人がこうやって対面するのって久しぶりなんでしょうか?

仲俣 実は1カ月前くらいに、下北沢のそこらへんでバッタリ会ったんですよ。今話しているのが7月初旬だから、6月頭ぐらいかな?

桜井 そうそう、道端でバッタリ……でも、付き合い自体はけっこう長いですよね。ぼくが最初の小説『アレルヤ』を出した2002年からだから……もう18年になるのか。

仲俣 桜井さんの本が出てまもない頃に、知り合いの編集者が「面白い人がいる」って紹介してくれたんですよね。それで、何人かで飲んで。

桜井 仲俣さんも同年、ぼくより何ヶ月か前に、『ポスト・ムラカミの日本文学』という一冊目の本を出されていて。ぼくにとっては、朝日新人文学賞の審査員の先生たちを除けば、生まれて初めて会う評論家が仲俣さんでした。それからは、まあ、飲み友達ですよね(笑)。……そういえば、2006年に吉祥寺のセレクト書店「百年」がオープンした時も、最初のトークショーは仲俣さんとぼくで喋ったんでした。

仲俣 あの場でも飲んでたかもしれないなあ。シラフできちんと話すのは、今日が初めてかもね(笑)。

桜井 ほんとだ(笑)。

仲俣 先日バッタリ会って立ち話したときに、桜井さんが「ノンアルコールビールを扱い始めた」っていうから、「そうなんだ!」って。

桜井 「毎週水曜日はCCCでロー・アルコール・ビストロをやってるんですよ」とか言ったら、翌日すぐにお店に来てくれて。

仲俣暁生

町田康さんが酒をやめて、桜井さんもノンアルを飲み始めたとなると、批評家としては同時代的な線をつなげなきゃいけないな、と思って(仲俣)

 

仲俣 それで、ビストロ「MARUKU」で、ドイツのノンアルコールビール「エルディンガー」を飲ませてもらったら、とても美味しくて。以来、僕は酒も飲むけど、ノンアルコールビールも飲むようになった。そういえば、ちょうど桜井さんからノンアルコールビールの話を聞いたころに、僕の頭の片隅にあったのは、昨年末に刊行されて話題になっていた町田康さんのエッセイ『しらふで生きる 大酒飲みの大決断』だったんですよ。町田さんが酒をやめて、桜井さんもノンアルコールビールを飲み始めたとなると、批評家としては同時代的な線をつなげなきゃいけないな、と思って(笑)。桜井さんは実際、どういうなりゆきだったの?

 桜井 ここ5、6年かなあ、お酒を飲んだ時のマイナス面を痛感するようになってたんです。誰かと外で飲んでいても、途中からは「ああ、また口がすぎてるな」とかって頭の隅で感じてたりして。しかも、ぼくは酒席での言動が記憶に残っちゃうタイプだから、翌朝になると、前の晩の暴言や粗相がバーッと蘇って、もう最悪(笑)。

 仲俣 なるほど、そういうことなんだ。肝臓だとか、体の不調ということではなくて。

 桜井 肉体の方は、わりと大丈夫なんですけどね。精神面ですよね。飲んだ翌日は、ひどい気分で一日を過ごす羽目になる(笑)。で、改めて考えてみると、若い頃に比べてここ数年は、飲んでいて心から楽しいと思える「打率」がめちゃくちゃ低くなったなあ、と。

 仲俣 ハハハ、「打率」が落ちた(笑)。

 桜井 ええ。引退を考えざるを得ない打率です(笑)。

 仲俣 ひとつ確認したいのは、僕は物書きと同時に編集の仕事もしているから、酒を飲むとなると、仕事に絡んだ機会が多いんだよね。だからそもそも「打率」がそこまで発生しないというか、仕事上の飲みは「打席」に立ったことになるのか、という(笑)。桜井さんはそんなに「打席」に入ってたの?

桜井 いや、僕は仕事の打ち合わせでも、お酒が入ってないとちゃんと喋れないところがあって……。

桜井鈴茂

酒席という「打席」に入っては三振、ピッチャーゴロ、ゲッツーの日々。(桜井)

 

仲俣 そうか、緊張の緩和剤として。

桜井 そう。コーヒー飲みながらだとイマイチうまく話せないんですよね。というか、そう思い込んでた。だから、打ち合わせはなるべく夜にしてもらって、酒を飲みながらやってきたんだけど、どうしてもマイナス面が出ちゃう。最初のほうは、なかなか良い感じなんですよ……コーヒー飲みながらなんかよりもずっと(笑)。でも、途中からブレーキが利かなくなって。ちょうど良い頃合いでスパッと切り上げる、なんてことはもちろんできず、もう一杯、もう一軒……と飲んでいるうちに、だんだんボロが出てくる。だから「打席」に入っては三振、ピッチャーゴロ、挙句の果てはゲッツー、みたいな日々だった(笑)。

 仲俣 でもそこから、ノンアルコールビールを飲むまでには、ステップがあるよね?

「これなら、ノンアル生活、ずっとイケる!」ってバカみたいに高揚したのが、禁酒してから10日目くらいのことだったかな。(桜井)

 

桜井 ステップ……2020年1月25日が最後にお酒を飲んだ日で、その晩はいつものごとくへべれけになって、翌日は最悪の二日酔い……ベッドからも出たくなかったですね。その二日酔いの苦しみの中で、いったん体からアルコールを抜き切ろうと思った……ま、なんてことのない話に思えてしまうかもしれないけど、ぼくは休肝日の全くない人間だったので、それでも小さな決心です。でも、妻はぼくに輪をかけた酒飲みだったから、晩ご飯の献立は見事に晩酌系なんですよ。なので、ジュースやお茶を飲みながら、というわけにはいかず、近くのスーパーでノンアルコールビールを買ってきて。そんなかんじで何日間か過ごすんだけど、ふと、以前より一日が長いことに気が付いたんです。これまでは晩ご飯の後ってスマフォ片手にダラダラするか、酔った勢いで夫婦喧嘩するしかなかったんだけど(笑)、ノンアルだと意識が冴えたままだから、きちんと本も読めれば、音楽も聴ける。あれれ? なんだこの時間は!? って。

 仲俣 フフフ、そんな発見があったと(笑)。

 桜井 そうなんです。ただ、ネックだったのが、大手のビール会社が売り出しているノンアルコールビール、というか、ビールテイスト飲料。あの、カロリーとか脂質とか、いろんなものがゼロになったやつね……ゼロになってないやつもあるけど。それらが、どうしても口に合わなくて。それで、ネットで、輸入もののノンアルコールビールを探して出して、試し飲みし始めたんです。そうこうしてるうちに、見つけた「エルディンガー」が本当に美味しくて。「これなら、ノンアル生活、ずっとイケる!」ってバカみたいに高揚したのが、禁酒して10日目くらいのことだったかな。

 

【プロフィール】

仲俣暁生氏
仲俣暁生(なかまたあきお)
評論家・編集者。1964年、東京生まれ。著書『ポスト・ムラカミの日本文学』、『極西文学論―Westway to the world』、『〈ことば〉の仕事』、『再起動せよと雑誌はいう』、『失われた娯楽を求めて―極西マンガ論』、『失われた「文学」を求めて|文芸時評編|』、共編著『「鍵のかかった部屋」をいかに解体するか』『編集進化論―editするのは誰か?』など。下北沢に20年以上在住。
桜井鈴茂(さくらいすずも)
1968年4月23日、札幌市の天使病院にて出生。石狩郡当別町で育つ。明治学院大学社会学部卒業。同志社大学大学院商学研究科中退。バイク便ライダー、カフェ店員、郵便配達員、スナックのボーイ、小料理屋店長、水道検針員など、さまざまな職を経たのちに、『アレルヤ』(朝日新聞社/2002年、双葉文庫/2010年)で第13回朝日新人文学賞を受賞。著書に『終わりまであとどれくらいだろう』(双葉社/2005年)、『女たち』(フォイル/2009年)、『冬の旅』(河出書房新社/2011 年)、『どうしてこんなところに』(双葉社/2014年)、『へんてこなこの場所から』(文遊社/2015年)、『できそこないの世界でおれたちは』(双葉社/2018年)。現在は、双葉社の文芸webマガジン「COLORFUL」http://www.f-bungei.jp にて『探偵になんて向いてない』を連載中。 ハーフマラソンとDJと旅と猫とノンアルコールビールを愛好。
公式サイト http://www.sakuraisuzumo.com/
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